早期化により、学生の就活か過熱化し、企業の母集団が異常にふくらみ、採用学生の絞り込みに膨大な費用と労力がかさむようになった。効率が低下してきたことへの反省もあった。これらさまざまな事情から、「学生を早期に囲い込む新卒採用は曲がり角に来ている」、「このままでは日本の将来を担う人材が育たず、産業界の競争力が低下する」と心ある多くの採用担当者が実感しはじめていたのである。大手商社の決断は、こうした状況下で出てきたものだ。
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大手商社七社の二〇一〇年春入社の新卒は、合計七三〇人。就職人気の高い商社の提案だけに、産業界に投げかけた波紋は大きかった。大手商社の中には「産業界で歩調が合わなければ、優秀な人材確保に支障が出かねない」と心配する声もあったが、産業界全体の足並みを待っていたのではいつまでも早期化是正は進まない。実はキャノンMJや大手商社の決断に同調する声が大学関係者はもちろん、企業の採用担当者の間でも多かった。今年「夏休み選考」に踏み切ったキャノンMJは「来年以降も続ける」(採用課長)と明言しているが、同社には夏休み選考に関心を持つ採用担当者からの問い合わせが多くきているという。多くの企業担当者の本音は「入社の一年前から内定を出すとフォローが大変。一九九〇年代半ばのように四年生の夏休みに短期集中して採用選考したい」というものだからだ。大学、短大で作る就職問題協議会が就職指導担当者に行った調査でも、「学生が就活を行う適切な時期」として「卒業年度の四月以降」に次いで「夏休み選考」が多かった。帝国データバンクが一〇月に行った調査でも、採用活動の開始時期を現在よりも遅らせることへの賛否を尋ねたところ、調査対象二万二八〇〇社の55・4%が「賛成」と答え、「反対」の6・9%を大きく上回っている。理由は「人材の見きわめは社会人一歩前が望ましい」、「学業に専念する期間を多くとることが社会全体のプラス」という。